横道誠「ひとつにならない」

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1,800円(税込1,980円)


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(公式インフォより引用)

脳も、セックスもいろいろだ。
だから、ひとつになんかならないし、なれないのだ。

空気が読めない、身体がうまく動かない、発達障害者のわたしはどう愛しあう?
ASD(自閉スペクトラム症)・ADHD(注意欠如・多動症)の当事者が聞き書く、赤裸々な発達障害本。

「四〇歳で発達障害の診断を受け、過去のことを振りかえるにつれて、これまで謎だった、自分のさまざまな言動の謎が解けてきた。恋愛に発展しそうなコミュニケーションが発生しても「空気を読めない」し、性交渉の場面で、奇妙なことに「こだわり」を発揮してしまう。というのも、自閉スペクトラム症があると、標準的なコミュニケーションが困難になって、一般的には理解されにくい嗜好に支配されるからで、注意欠如・多動症があると、注意が拡散したり、衝動的に行動に出たり、過剰に動き過ぎてしまうからだ。

性交渉では、他者と出会い、生身の自分をさらけだして(どの程度かは、その人自身にも、そのつどの相手にもよる)、仲を深めていき、一緒に気持ち良くなるための擦りあわせが必要になる。それは発達障害者にとって、もっとも苦手なことの集合体といえるかもしれない、と私は考える。おまけに、発達障害者にはジェンダーやセクシュアリティの揺らぎを抱えている者が多くいて、それが状況を余計にややこしくする。

定型発達者(発達障害がない人たち)から見れば、私たちの挙動は奇行まみれに見えるだろう。実際、私はいまでも──性に関する場面に限ったことではないけれど──貴公子ならぬ奇行士だ。

しかし、思えばおかしなことではないだろうか。性の問題は非常に切実なはずなのに、しかも発達障害に関する本は世にあふれるほど出ているのに、「障害者と性」はタブー視されがちで、発達障害者の性行動について詳しく掘りさげた本はほとんど見当たらない。はたして、仲間のみんなはどうしているのだろうかという真剣な思いから、そして、もちろん多少あった単純な好奇心からも、この企画は始まった。」(「はじめに」より)

【目 次】
はじめに
序 章 横道誠のヰタ・セクスアリス
第一章 パンセクシャルの白髪葱さん
第二章 元プレイボーイの青さん
第三章 ノンバイナリーのしぇるどんさん
第四章 愛の当事者研究に励む鷹村了一さん
第五章 元セックス依存症者の唯さん
第六章 リスセクシャルのぷるもさん
第七章 シロウト童貞の数独さん 
第八章 メンヘラな姫野桂さん
おわりに

目次
はじめに

序 章 横道誠のヰタ・セクスアリス
発達障害者に世界はどう見えるのか?
発達障害者の等身大の生活を聞き書く
対話で浮遊、混濁、惑溺していく意識

第一章 パンセクシャルの白髪葱さん
マントラは脳内多動にはちょうど良い
父親の手が伸びて、それを撥ねのけた
タキシード仮面よりも、百合を見たい
はじめての恋の相手は、年下の女の子
一〇代の上京とメンタル不安な男たち
「普通」を擬態していたホステス時代
客とつきあうもほとんどモラハラの人
職場の近くのミックスバーで自己分析
東京に出稼ぎにきて、風俗ではたらく
「モラハラじゃない人」と出会い結婚
あなたたちのほうがよほど宇宙人です

第二章 元プレイボーイの青さん
出会った日の、いきなりのプロポーズ
マセた坊やは性欲旺盛な中学生になる
人気者の自分と気持ち悪い自分が同居
『トレインスポッティング』的な生活
三〇歳をすぎめっきりモテなくなった
諦めたはずなのに、音楽にすくわれた
「普通」はどんどんアップデートする

第三章 ノンバイナリーのしぇるどんさん
二宮金次郎と呼ばれていた小学生時代
ノンバイナリージェンダーと多重人格
「パパ活」は、一種の自傷行為だった
プライド・パレードで感じていた断絶
社会の「女性像」を演じられない苦悩
壊れっぱなしの「分人」のメカニズム

第四章 愛の当事者研究に励む鷹村了一さん
不注意だけど、やたら気の利く子ども
恋の成就のため当事者研究に取りくむ
女性的な情緒と男性的な行動力が同居
とんとん拍子で婚約して、破棄される
つらい別れと二万円の情報商材の購入
宇宙人でも主体的に動けば「いける」

第五章 元セックス依存症者の唯さん
マイワールドを持った、マセた女の子
中学の記憶は楽しいと暗いで乖離する
ほっぺにキスしたプリクラで無期停学
デリヘルになると仕事となり気が重く
大学に入り、止められなくなるパパ活
ソウルメイトを得る喜びと失う悲しみ

第六章 リスセクシャルのぷるもさん
自転車で甲州街道を四時間進み山梨に
某カルト教団施設で、育てられた少女
誰からも、性的対象に見られたくない
急に友達が絶縁してしまうそのわけは
教祖が信者たちの結婚を一括管理する
セックスレス外来でD V を指摘される
主体的に相手の性欲を支配したい欲望

第七章 シロウト童貞の数独さん
巨乳が大好きなマッチョイズムの少年
発達界隈最強クラスのA T フィールド
セックスのほうが気持ちよかったです
暗鬱な思いに包まれた、二〇代の日々
思いつきで民宿を五島列島ではじめる
生きづらい人の、その頑固さと純粋さ

第八章 メンヘラな姫野桂さん
知的な両親と、国立公園での田園生活
進学校へ編入し、性と文学に目覚める
上京からの初体験、そしてバンギャに
アラサーになった不安で性的に奔放に
朦朧とした脳は、いつも覚醒を求める

おわりに

著者プロフィール
横道誠 (ヨコミチマコト) (著/文)
横道 誠(よこみち・まこと):
1979年、大阪市出身。京都府立大学准教授。文学博士(京都大学)。専門は文学・当事者研究。著書に、『みんな水の中――「発達障害」自助グループの文学研究者はどんな世界に棲んでいるか』(医学書院)、『唯が行く!――当事者研究とオープンダイアローグ奮闘記』(金剛出版)、『イスタンブールで青に溺れる――発達障害者の世界周航記』(文藝春秋)、『発達界隈通信――ぼくたちは障害と脳の多様性を生きてます』(教育評論社)、『ある大学教員の日常と非日常――障害者モード、コロナ禍、ウクライナ侵攻』(晶文社)がある。

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