(公式から引用)
紹介
高度経済成長期の前夜――総中流社会の基盤になった「人々の普通の生活」は、どのように成立したのか。1965年の社会調査を復元し再分析して、労働者や母親の生活実態、子どもの遊びや学習の様子、テレビと一家団欒など、「総中流の時代」のリアルを照射する。
解説
高度経済成長期の前夜――労働力が都市に集中していき、核家族が増えていくなかで、日本は「総中流社会」と言われた。では、総中流の基盤になった「人々の普通の生活」は、どのように成立したのだろうか。
サラリーマンとその家族が住む集合住宅=団地に焦点を当てて、1965年におこなわれた「団地居住者生活実態調査」を現代の技術で復元して再分析する。そして、当時の生活文化や団地という社会空間がもつ意味を実証的に浮き彫りにする。
労働者や母親の生活の実態、子どもの遊びや学習の様子、テレビと一家団欒――「普通の生活」の基準ができあがる一方で、男性の長時間労働や遠距離通勤、性別役割の固定化を生む要因にもなった「総中流の時代」のリアルを照射する。
目次
はじめに 相澤真一/渡邉大輔
第1章 普通の時間の過ごし方の成立とその変容――高度経済成長期の団地生活での一日のあり方 渡邉大輔
1 生活時間調査としての「団地居住者生活実態調査」
2 高度経済成長期の団地生活での生活時間の実態
3 団地生活での生活時間のマクロ・ミクロ分析
コラム1 団地生活と耐久消費財――新しい生活の形 渡邉大輔
第2章 団地での母親の子育て 石島健太郎
1 団地での母親のつながり
2 団地の母親が置かれた状況
3 団地のつながりを分析する
4 母親にとってつながりとは何だったのか
5 つながりをさらに調べるために
コラム2 耐久消費財の普及は家事時間を減らしたのか 渡邉大輔
第3章 団地のなかの子どもの生活時間 相澤真一
1 「子供など夫婦以外の世帯員生活時間表」の集計方法
2 一九六五年の団地の子どもたちの生活時間の分布
3 一九六五年の団地の子どもたちの生活行動
コラム3 近代日本のオルガンがある風景/「総中流」社会のピアノがある風景 相澤真一
第4章 団地のなかのテレビと「家族談笑」 森 直人/渡邉大輔/相澤真一
1 データの集計方法と基本統計量
2 どのような世帯の、誰がより長く、どのような番組のテレビを見ていたのか
3 テレビは大衆文化の伝達メディアだったのか
コラム4 団地生活と家事の外部化 渡邉大輔
コラム5 ミシンと専業主婦の「幸福な」結び付き 佐藤 香
第5章 団地と「総中流」社会――一九六〇年代の団地の意味 祐成保志
1 なぜ団地を調査するのか
2 政策の手段
3 住宅の内部構成
4 集合の形式
5 団地と「総中流」社会
コラム6 総中流社会と湘南電車 相澤真一
補 章 「団地居住者生活実態調査」の概要とデータ復元について 渡邉大輔/森 直人/相澤真一
おわりに 渡邉大輔
著者プロフィル
渡邉 大輔(ワタナベ ダイスケ)
1978年、愛知県生まれ。成蹊大学文学部准教授。専攻は老いの社会学、社会老年学。共著に『ソーシャル・キャピタルと格差社会』(東京大学出版会)、『ライフスタイルとライフコース』『変貌する恋愛と結婚』(ともに新曜社)、『計量社会学入門』(世界思想社)など。
相澤 真一(アイザワ シンイチ)
1979年、長崎県生まれ。上智大学総合人間科学部准教授。専攻は教育社会学、社会調査、比較歴史社会学。共著に『子どもと貧困の戦後史』(青弓社)、『〈高卒当然社会〉の戦後史』(新曜社)、共編著にHigh School for All in East Asia(Routledge)など。
森 直人(モリ ナオト)
1970年、石川県生まれ。筑波大学人文社会系准教授。専攻は教育社会学。共著に『教育システムと社会』(世織書房)、『再検討 教育機会の平等』(岩波書店)、論文に「「総中流の思想」とは何だったのか」(「思想地図」vol.2)など。
東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センター(トウキョウダイガクシャカイカガクケンキュウジョフゾクシャカイチョウサデータアーカイブケンキュウセンター)
東京大学社会科学研究所は、「平和民主国家及び文化日本建設のための、真に科学的な調査研究を目指す機関」として1946年に東京大学に設置された研究所である。法学・政治学・経済学・社会学の4つのディシプリンにまたがる総合的な社会科学の研究所であることを特徴とし、多分野のスタッフが参加する共同研究の推進、社会科学研究のインフラ整備、量的・質的に充実した調査研究活動を実施している。また、英文の社会科学専門誌Social Science Japan Journal(SSJJ)を刊行して、日本の社会科学研究の成果を世界に発信している。