日本近代文学研究者である曾根博義(1940―2016)が様々な文学と古本をテーマに媒体に執筆した文章をまとめた一冊。
文学をじっくり味わうこと、古書店をめぐって見知らぬ本と出会う喜び、そういったものが凛とした文章で綴られています。
文学の尽きぬ魅力、人生を多くの書物と共に過ごす幸せがいっぱいに詰まっています。
四六判/392ページ
(以下、公式インフォより)
『私の文学渉猟』は日本近代文学研究者の著者がさまざまな
媒体に執筆した、文学と古本にまつわるエッセイ集です。
扱われる作家、本は昭和が中心で、かなりの古書マニアでないと
知らないような作家、本、雑誌がいくつも出てきます。
けれど、この本はそうした稀覯書を紹介する本ではありません。
古本のを買うという行為に焦点をあてた本でもありません。
本書が正面から描くのは、文学、書物の世界の奥深さです。
戦時下の文学全集の行方を追う「『新日本文学全集』と戦争下の出版状況」、
文学が広く一般読者に読まれる過程をひもとく、「文芸評論と大衆」、
開戦の日の小林秀雄の文章を考える「十二月八日――真珠湾――知識人と戦争」等々、
文学好きの読者に読んでほしいエッセイがいくつも収録されています。
目次
第一章 持つと持たぬと
持つと持たぬと
娘の眼
索引がこんなに面白くていいかしら
雑誌の発売日
芥川龍之介と宇野千代
日本近代文学館編『文学者の日記』について
『新日本文学全集』と戦争下の出版状況
文芸評論と大衆—昭和三〇年代の評論の役割—
第二章 『L’ESPRIT NOUVEAU』第七号の行方
第一書房版『ユリシイズ』の怪
雑誌『L’ESPRIT NOUVEAU』第七号の行方(上)
雑誌『L’ESPRIT NOUVEAU』第七号の行方(下)
海彼から押し寄せたレスプリ・ヌーボー—『詩と詩論』と『トランジション』—
「アパート」の「孤独」—新語から見た近代日本人の生活と観念—
一二月八日—真珠湾—知識人と戦争—
第三章 犬も歩けば 近代文学資料探索
百田楓花『愛の鳥』
雑誌『不確定性ペーパ』
川端康成『純粋の声』
小林多喜二「スキー」
英美子『浪』
井東憲『人間の巣』
英美子『春鮒日記』
伊藤整『石を投げる女』
『丹羽文雄選集第三巻 薔薇』
島木健作『再建』
雑誌『新若人』
青柳優『批評の精神』
回覧雑誌『榎』
金井融遺稿集『永遠なる郷土』
衣巻省三「けしかけられた男」
評論雑誌『現実へ』
雑誌『鳰の巣』
生田蝶介『歌集 宝玉』
深尾贇之丞『天の鍵』
『横光利一集 第一巻』
『川端康成集 第一巻』
瀧田樗陰愛蔵品入札目録
青木茂若『雪に埋れた葡萄園』
小樽高商校友会誌
武田麟太郎編『学生生活短篇集』
第四章 伊藤整と私小説
太宰治と伊藤整
伊藤整と私小説
志賀直哉と伊藤整—「城の崎にて」をめぐって—
大槻憲二と伊藤整とアナキズム
谷崎潤一郎と伊藤整
伊藤整のなかの詩
『日本文壇史』の叙述法
自己喪失を見つめる文学—完結する伊藤整全集に寄せて—
雑談・伊藤整の生と死