北海道土産の定番・木彫りの熊。特に鮭をくわえてるいるのが有名で、有名過ぎて熊が鮭に食べられてるパロディ商品なんかも北海道にいくとたくさん見かけるほど。
そのザ・北海道的な木彫りの熊ですが、そのルーツは北海道渡島半島の北部にある八雲町にあるそうです。そもそもは尾張徳川家19代当主の徳川義親が旅行先のスイスから持ち帰ったペザントアート(農村美術品)を参考に、八雲での生産を奨励したのが始まりとのこと。
本書には八雲で作られてきた木彫りの熊がカラー図版で多数紹介されているのですが、どれも素朴でぬくもりを感じる造形で、いま北海道のお土産屋さんで売っているものとは全然違います。もっと本当に、民芸品という感じで、作り手の息遣いを感じるようなものです。その歴史を知れば知るほど、当たり前のように思っていたあの木彫りの熊に込められたものがわかってくる気がします。
縦21cm x 横17.5cm 80ページ
ELVIS PRESS 公式サイトより
北海道土産の木彫り熊=「八雲の熊彫」として最初にブランディングに成功したのが、徳川義親が支援した現在の八雲町でした。本書はそのルーツを辿るテキスト、インタビューと、柴崎重行や茂木多喜治を始めとする北海道八雲町の作家たちの作品を収録したガイドブック的一冊です。
単なる土産品に留まらない「八雲の熊彫」の創造性は、柴崎重行や茂木多喜治らによって命脈を保ち、現代の我々の眼を今もって驚かせてくれています。
木彫り熊たちは、ときに愛くるしく、ときに厳しい姿をみせていますが、これらを彫りあげた一工人であり一作家である彫り手たちの意志、そして、義親がどんな思いで一農民である彼らの暮らしを支えたのか。彼らの生きた時代、その思いを、このささやかな書を通して思い描いて頂ければ幸いです。
装画・題字:林青那