百万年書房を主宰する編集者・北尾修一さんによる、大腸にガン腫瘍が発見されてから手術直前までの2ヶ月強の日々を綴った日記です。
様々な仕事を抱える忙しい毎日を、自分の死の可能性を考えつつ生きるとはどんなことなのか。その感覚がヒリヒリと胸に迫るような一冊。
自分ならどうするだろう…と考えずには読めない内容です。
A6/152ページ
(以下、公式インフォより)
タイトル:自分思い上がってました日記
著者:北尾修一(百万年書房)
装画:大橋裕之
装幀:木庭貴信(OCTAVE)
《本文より》
●2023年6月6日
完全に思い上がっていた。
自分と百万年書房はしばらくこのまま続くと過信していた。
2年続けて健康診断の消化器検査がE判定だったので、勇気をふり絞って恵比寿のクリニックで大腸内視鏡検査を受けたら数十分後、「ガン腫瘍がありますね」と医師からフランクに告げられた。
マジか、貴様誰にでもこんな軽いノリでガン告知するんか⁉
と、そっちに驚いた。
この時、あんまりよく覚えていないんだけど「あ、そうですか」みたいなリアクションを自分はした(と思う)。取り乱さなかったのは、「現実感がなかったから」だけではたぶんなくて。もともと両親ともにガンで60歳前後で死んでいるので、自分もきっと長生きはしない、という予想は20代の頃からしていた。それに、検査前からなんとなーく嫌な予感がしていて、最悪の事態はどこかで想定していた。
(中略)
寝る前に洗面所に行ったら、青に「あのさ、明日死ぬ確率はボスも青も同じって知ってた?」と言われた。
「おー、ほんとだね。おやすみー」
「おやすみー」
寝室に戻りベッドにダイブし、1分後に眠る。