立野由利子・文 松本千里・絵「瞬きと共振」

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700円(税込770円)

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江戸時代に井原西鶴、江島其磧といった書き手によって創作された「浮世草子」を、いまの言葉で綴りなおした一冊です。

それぞれの作品は短いながら、なんともいえない余韻を残すものばかり。私たちがすっかり慣れてしまっている「物語」の枠を自由に飛び越えていくような、不思議な手応えを感じます。

かつて綴られた物語と共振しつつ、そこから新しい息吹を生み出すような試みに思えます!

B6/40ページ

(以下、公式インフォより)

Zine『瞬きと共振』とは
立野由利子と松本千里が合作で制作したZineです。江戸時代に書かれた浮世草子7編を文章とグラフィックで再解釈しています。

企画と制作について
グラフィックデザイナーの松本さんとなにか一緒に作りたいと思っていた私は、福岡で毎年行われるイベント・10zineに出展する予定で2022年の年明けから企画を考えていきました。私が大学時代に江戸時代の古典を学んでいたこと、松本さんが浮世絵をベースにイラストを描いていたことから「江戸時代」をテーマに何かしようという話になりました。
原案となる浮世草子の話は「愛していたい。(でもそれだけのことが下手くそ)」というテーマで選んでいます。SNSや周りを見ていて「愛していたいのにそれがうまくいかない」「人との距離感がうまくつかめない」ことにもがいている人がたくさんいると感じていたし、浮世草子に描かれる人物たちともそういったところがリンクするのではないかと思ったからです。愛していたい、というのは恋愛に限定した話ではなく、たとえば風景や生活、自分自身の生き方などあらゆるものを含んでいます。
10zineのレコメンドで「300年前のSF、推し、フェミニズム」というワードをいただきましたが、そういったテーマに関わる話も意図的に選びました。

タイトルについて
自分が古典について感じてること、今回のZineでやりたいことを考えた時に頭に浮かんだイメージは瞬く光、体に伝わる振動のようなものでした。要は、「伝達と共感」なのですがもっと身体感覚に根差した言葉として「瞬きと共振」としました。制作当時、松本さんにタイトルについて送った文章をほぼそのまま転記します。

共振...昔を生きた人の気持ちが今の私たちの心に振動をもたらす、というのを伝えたい。「共感」ではないことがポイントです。
瞬き...翻案ってなんなんだろうと考えたときに頭に浮かんだイメージが「無数の小さな光(言葉や心の動きのようなもの)が風に乗って飛んでくるのを側で受け止めて、それを逆側に振り直してまた飛ばしていく」その飛んできたものを表すなら「瞬き」だなと思いました。
共振は振動なのでどちらかといえば音で、瞬きは「光の明滅」という意味があるので、視覚と聴覚どちらにも働きかけてる感じがいいな、と。

文章について
今回行ったのは、現代語訳ではなく翻案・再解釈といわれる類のものになります。ただ現代語訳するだけでは、時代や場所といった制約から物語が抜け出せないのではないかと思ったからです。タイトルを変える、登場人物の名前を新しくつける、原案になかったセリフをつくる、など自分なりの視点で再解釈しながら様々なことを行いましたが、一貫して「物語の終わりは変えない」ことだけは決めていました。また、一般的に「弱者」や「被害者」、「マイノリティ」と言われるような属性の人物たちも登場しますが、彼らをラベルに沿って描くのではなく、彼らなりのエゴを持っていることも示したいと思っていました。
原案となる浮世草子の作者は、井原西鶴、江島其磧、北条団水といずれも江戸前期の上方文学で活躍した人物です。彼らが物語を生み出した時代から350年ほど経っていることもあり、特に女性の描き方は大きく変わったのではないかと思います。どの話も現代の物語として読めると思いますし、言葉も難しいものは使っていません。現代語訳は当ブログに掲載しておりますので、よろしければそちらもご覧ください。

デザインについて
松本さんには、表紙・各話扉絵のグラフィックと冊子全体の組版をやっていただきました。
表紙については、タイトル決めのときに松本さんに送った文章を読んで、整列された円形のグラフィックが浮かんだとのこと。そこから、私たちの共通のワードとして「ビー玉」が出てきて、球体のなかにいろんな柄が入ってるみたいな絵面の表紙になりました。
扉絵については、私が松本さんにお送りした現代語訳と各話のキーワードを基につくっていただきました。共作するにあたって「言葉のつじつま合わせになるようなグラフィックはやめましょう」とお互いに話していました。それぞれが物語から感じたことは重なる部分も重ならない部分もあるのですが、だからこそ文章とグラフィックを合わせたときに良いぶつかりが生まれることを意図して制作していました。
松本さんのグラフィックによって、物語の新たな面が文章とは違う形で立ち現れたなと感じています。

ちなみに、本記事で書いた内容とそのこぼれ話について話したインスタライブを先日行いました。お互いの思い入れのある物語やひそかに決めていたこと、サマーウォーズのクライマックスさながらの入稿に至るまでなどざっくばらんに語っております。ネコが松本さん、ペンギンが立野です。ラジオがわりにお楽しみください。

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